海老名の家02
*SUPPOSE DESIGN OFFICE担当プロジェクト



内外を横断する空間の豊かさや魅力は語るまでもないが、外部に開くことが難しい環境下で、そんな魅力を持つ住宅をつくれないだろうか。
この建物は、建物を覆うコンクリートの壁を5つに輪切りにしてできたリングをずらしながら積層する構成になっている。ひとつひとつのリングの高さは一般的な住宅の階高よりも小さく、一見すると「階」というものが存在しないように見える。リングが階とは異なる層で空間を分節し、層が重なることで、階段などのコア、リビングなどの内部空間、庭などを編み込むように空間がつくられ、各層は自分の立ち位置によって他の層との関係性が変化し、空間を多義的なものにしている。リングがつくりだす層のずれと重なりの構成によって、背丈より低い開口部や、背丈の倍ほどの天井高さのリビングなど、多様なスケールの空間をつくりだす。天井高さを低く抑え開口部をめいっぱいとることで、より外の環境に近い室内をつくったり、天井高さを上げて気積を大きくとることで、そのおおらかさ自体が部屋というよりは外の環境に近づけるなど、内外を横断するような豊かさをつくりだしている。建物の構成は内外の境界面の操作にもなり、本来閉じるべきはずの壁がずれによって光や風を呼び込む。内外の環境が曖昧になり、窓を開け放てば庭と部屋を仕切っていたリングが消え、外側のリングによって一つの空間に変化する。リングをずらし積層する操作で、一般的なスケール感を解体、同時に内外の関係性も再構築し、豊かな空間をつくりだした。それは住宅/庭/都市という関係を一義的なものから多義的なものに変換することで、多様なものが同居するこれからの時代に対し、境界のつくり方とスケール感で、積層する建築の新しい可能性になる空間の強度をもった建築である。
計画地 Site | 神奈川県 Kanagawa prefecture |
用途 Use | 住宅 House |
建築面積 Site area | 100㎡ |
延べ面積 Total floor area | 200㎡ |
構造 Structure | RC造 Reinforced concrete |
階数 Floor number | 3階建 3floor |